Essay of 竹澤イチロー


「足るを知る者は富む」2009年5月7日記す)


 日本はとても豊かな自然に恵まれた島国です。四季を織りなす自然に多くの芸術家達が魅了され、その美を表現してきました。その美しい自然や町並みは、人間の歯止めの利かない欲望により破壊し続けられています。もうこれ以上の自然破壊や都市開発は必要ありません。そしてこれ以上の「便利さ」もまっぴらごめんです。何不自由なく衣食住に満ち足りている人間が、まだ何かが足りない、あれも欲しい、これも欲しいと地獄の餓鬼のようにむさぼり狂う現代。極度に金融資本主義に傾いた文明はもう飽和状態で、限りある地球の資源は、近い将来底をつくであろうし、自然破壊がこのまま続けば、人類の生息すら危うくなってきます。「便利さ」と同時に獲得したものが、昨今蔓延するあらゆる不気味な病、天変地異であるというのは何とも皮肉な話です。

 一昔前、「狭い日本そんなに急いでどこへ行く。」というコマーシャルがありました。スピードが求められる時代は昔も今も変わりませんが、現代はスピードこそが善であるといった風潮すらあります。早ければいいというものではありません。新幹線に乗ると早すぎて恐怖すら感じます。近隣住民への騒音問題も深刻です。インターネットの世界は進化し過ぎて法的整備が追いつかず、低年齢層に及ぼす教育上の悪影響は計り知れません。美しい車窓を眺める余裕を失った人々が、欲望という名の電車に乗り、地獄の亡者がひしめく千尋の谷へまっしぐらに突っ走っているかのようです。私たちは、今こそ「いのち」の基本に立ちかえり、世界を再認識していく必要があるのではないでしょうか。


 仕事の手を休め、ふっと立ち止まり、大地の呼吸を丁寧に深く感じ取ってみて下さい。腹式呼吸がいいでしょう。鼻から吸って、ゆっくりと口または鼻から出す。吸うときは、いいエネルギーが体内を満たしてくれるようなイメージを抱きながら吸い、吐くときは、ゆっくりと悪いエネルギーを身体から吐き出すように。そうすると心身ともに浄化され、身近にいる精霊たちのささやきが聞こえてくるかもしれません。また、日々さまざまな「いのち」に生かされている現実に、心から感謝の思いを捧げる気持ちになっている自分にハッとするかもしれません。

 我々は、今一度、冷静にスタート地点に立ち、物事を判断しなければなりません。
 現代の我々に最も必要なことは、生かされていることに日々感謝し、喜びを感じながら、なるべくシンプルに生きることです。
ごく普通に、呼吸をするように、あたりまえに生きていることのありがたさを今一度、心の底から感じてみることは大切なことです。

 老子(中国古代道教の開祖とされる人物)は「足るを知る者は富む」と言いました。これからは「足るを知る時代」ではないでしょうか。